動物病院に着くと、すっかり元気になった子猫っ……


いや、“タマ”が先生に抱かれて出て来た。


『もう大丈夫ですよ。』


タマは元気に鳴いている。


「ありがとうごさいました。」


仁はタマを受け取り、丁寧に先生に御礼を言った。


病院からの帰り道――


「よかったねぇ~タマ!」


私が頭を撫でると
《ミャ~》とうれしそうな鳴き声をあげた。


タマは食欲が出て来たのか少しふっくらしている。


そんなタマを胸に抱き、仁もなんだか少し嬉しそうだ。


動物と接している時、この人は本当に優しい顔をするんだな。


穏やかな表情の仁を見ていると、暖かい気持ちになる。


「あっねぇ!」


「ん?」


「あの曲いい曲だよね。」


「曲?」


「いっつも仁がライブハウスで唄ってるやつ。」


「あぁ……」


いつの間にか“仁”と呼ぶことも自然になっていた。


「歌詞は仁が作るの?」


「…まぁな。」


相変わらず口数は少ないけど明らかに何かが変わったような気がする。


「あのCD欲しいなぁ~」


「え?」



「聞きたいって思った時に聞けるじゃん?なんか傍に置いておきたい一曲だよね。」


「……別に聞きたきゃ聞かせてやる。」


「ん?」


仁が何かボソッと言った言葉を一瞬聞き逃した。


「だからっ……!聞きたきゃいつでも唄ってやる、隣にいんだから。」


「……。」


へっ!?


仁は恥ずかしさを隠す様に早足で私の一歩先を歩いた。


無愛想な背中は少し照れ臭そうに去っていく。


仁……


正直にうれしかった。


初めて、あいつが隣でよかったかもって


ちょっと思った。