タクシーで家路に着く。



携帯で時刻を確認。



10時かぁ…遅くなっちゃった。



「はぁ―…」



気疲れしたな…。



エレベーターを降りて、鍵を手にした時――



部屋の前に誰か立っていた。



あれ…?



よく見ると若菜ちゃんだった。



「あっ先輩!」



若菜ちゃんがこちらに気付いた。



彼女と会うのは……



“わかってて下さい。先輩の中の余計なプライドの為に幸せになれない二人がいるって事…”



そう、あの日以来だった。



「どう…したの?」



すると、急に若菜ちゃんが深く頭を下げた。



「ごめんなさい!」



「えっ…」



えっ何!?



「私先輩にひどい事っ…」


体を震わせて頭を上げようとしない若菜ちゃん。



「えっやっ……ちょっと」


その時ちょうど同じ階の人がエレベーターを降りて来て、鍵を開けながら不思議そうにこちらをジロジロと見ていた。



「とっ…とりあえず中!!中入ろう!」



ガックリ肩を落とす彼女の腕を引っ張り部屋に入った。