「……晶子?」



「嘘つきだよ、千秋も仁さんも!本当は納得なんてしてないくせに。そんな簡単に気持ち整理できる程、軽いものじゃないでしょ!二人が築き上げてきた関係は。」



まるで自分の事のようにそう話す晶子。



「迷惑なんてねぇ、いっぱいかければいいのよ!誰にも頼らずに生きてる人間なんていないんだから!」



「晶子。」



「それに、仁さんがいないとダメな事ぐらい千秋が一番よくわかってるんじゃないの!?」



「……。」



「そうやって、自分の本音を押し殺して周りのせいにして……。本当は傍にいなきゃ、やってけないくせに。」



心の奥深くに眠らせた本心を



どうしていとも簡単に晶子は見抜いてしまうんだろう。


「前だってそうだったじゃない。」



「……でもね、」



ゆっくり重い口を開いた。


「でも、今回は前とは違うの。……これは前向きに考えた結果なんだ。」



「どうして?」



「仁の仕事は、たくさんの人に夢や希望を与える仕事だし、周りの人達の支えなしでは成り立たないって本当に思うんだ。」



「まぁそれはそうだろうけど……。」



「事務所やファンはもちろん、なによりここまで一緒に苦労してきたメンバーとの仲は絶対壊しちゃいけないと思うから。」



話しを聞きながら、複雑な表情を浮かべる晶子。



「それで、自分が身を引くってわけ?」



「……。」


「気持ちはわかる……なんてミュージシャンと付き合ってもいない私が言っちゃいけないのかもしれないけど、本当にそれが正しい答えなのかな。」



「正直ね、……まだ頭の中はぐちゃぐちゃで……」



「……。」



「口ではかっこいい事言っても、私はそこまで大人じゃないし……まだ、整理できてない部分もたくさんある。」



「……千秋。」



「でも……負けたくない。そういう弱い自分に負けたくないの。仁に依存して生きていくような事したくない。」



「依存じゃないじゃん!」


晶子は“ガンッ”とテーブルをたたき付けた。