「あのっ」


その時、店内が急に騒がしくなった。


『あっ始まるよ！』


『えっ今日だっけ？』


みんな奥のテレビ画面の方に注目しだした。


「どうしたのかな？」


私が聞くと、桜井君は少し背後を振り返ってテレビを指差し答えた。


「アレちゃう？」


指差したテレビに映し出されたのは《桜の季節》と題されたドラマ。


もしかして仁が出るドラマ？


しばらく画面に見入っているとドラマが始まった。


みんな食べるのも忘れ画面に見入っている。


「そんなに面白いのかな？」


小声でそう話すと、桜井君は興味なさそうにこっちを向いて答えた。


「ドラマよりジンやろ。」


「えっ？」


「特別出演でジンが出るらしいっすよ。あっ知ってる？マイクロシティのジン。」


「うん……知ってる。」


「それが見たいだけやろーあんな俳優でもないやつの演技見たってなぁ。」


ムカッ！


「いいよな。人気あるやつはなんでもやらせてもらえて。楽してるわ～俳優になりたくてもなられへん奴もおんのになぁ！」


彼の行き過ぎた発言にイラッとて思わず口を尖らせた。


「べっ別に楽してるわけじゃないよ！きっと。」


桜井君は手を止めて私を見る。


「あっもしかして、小原さんもジンのファン？」


「いっいや……だから、そうじゃなくてぇ。」


ヤバイ思わず熱くなっちゃった。


「彼は彼なりに苦労があったと思うよ！？」


「そうかなぁ、なんか俺から見たらちょっと顔がよくて唄がうまかっただけで運よくここまで来たって感じ。」


《ブチッ！！》


その言葉に私の頭の中で何かがそう音を立てた。