「桜井君は、どうしてこの仕事したいと思ったの?」


「ん~したいと思ったって言うより、気付いたら入ってたって感じかなぁ。」


「え~?そうなの?」


「俺、ほんまはモデルになりたかったんすよ!」


いきなり意外な話しを始めた。


「えっモデル!?」


「そう。今まで何回かオーディションも受けたけど、いっつも書類審査は通るのに二次審査がダメで……」


珍しく真顔の桜井君。


「で、結局親が“あんたいい歳していつまで夢見てんの~!”って痺れ切らせて渋々この仕事についたって感じやから。」


「へぇ~。」


案外頑張り屋さんなんだな。


「それじゃ、初日から遅刻もする訳だね。」


「いや、あれは計算。」


彼の意味不明の言葉に一瞬手を止めた。


「計算?」


桜井君はやや自慢げに話しをする。


「“遅れてくるイケメン新人!!”ってなんかカッコイイよくない?」


イッ“イケメン”って自分で言ったな……。


「それに遅れて来た方が目立つし!!」


まぁ、確かに目立ってはいたけど。


「どう思った!?俺が遅刻して来た時。ちょっとかっこよかった??」


目をキラキラさせながらそう聞いてくる。


「バカだなーって思った。」


「えぇ~!!」


私の素直な発言に意気消沈する桜井君。


なんだか少しかわいい奴。


「っじゃーあれだね、毎日仕事楽しくないでしょ!」


少し意地悪な私の質問に、彼は意外にも即答した。


「楽しいよ!小原先輩に会えるから。」


「……。」


思わずフォークに刺さったチキンが落ちた。


ちょっ調子狂うなぁ。


ふと、この前の事を思い出した。


会社を案内した時私に抱き着きながら彼が私に言った事……


《運命の出会いやで!!》


あれは、関西人特有のノリだと思っていたけど、もしかして本気で言ってたのかな。


私の正面でおいしそうに食事をする彼に聞いてみたくなった。