数十分後、タクシーはガードレール脇に停まった。



「ここですよ、ここ。」



彼の後に続いてタクシーを降りると、目の前にこ洒落たお店が現れた。



「何屋さん?」



桜井君の後に続きながら恐る恐る店に入る。



「うまいバイキングがあるんですよ。前に雑誌にも載った事があって……」



中へ入ると私たちと同世代の若いカップルや、仕事帰りだろうか数人のグループで飲んでいる人達で賑わっていた。



店員に案内され周りを気にしながら席に着く。



「すごい人だね。」



「結構人気あるらしいっすよ!」



「へぇ~。」



最近デートをしていない私は、こういうスポット情報に滅法疎い。



席に着いても落ち着かない。


正面奥に大型の壁かけテレビが設置されている事に気付いた。



仁のCM流れないかなぁ…なんてっ。



「何飲みます?俺入れて来ますよ。」



「あっじゃーとりあえずオレンジジュース。」



桜井君は笑顔で席を立った。


何気にその姿を目で追う。


黙ってれば紳士なのに……もったいない。



しばらくして戻って来た桜井君は、ジュースとパスタやムニエルやらが盛られたお皿を私に差し出した。



「ありがとう~。うわぁおいしそう!」



「マジでうまいっすよ!」



楽しそうにそう言うと、今度は自分の分を取って席に戻って来た。



「いただきまぁす。」



パクッと一口……。



「うぅん!超おいしぃ。」


「やろ~!?くせになりそうやろ?」



いつも敬語で話してくる年下の男の子が、たまにため口になるとなんだかドキッとする。



私だけ……??



いけない、いけない。



気を取り直して話しを仕事に向けてみた。