そこに書かれた住所は、マンションからは随分遠かった。


電話とバスを乗り継いで、やっと着いたその事務所の前にはたくさんの若い女の子達が集まってる。


マイクロシティの出待ちのようだ。


その女の子達に混じって様子を伺っていると、目の前に黒いスモークの貼られた大きなワゴン車が停まった。


女の子達は一斉にワゴン車の周りを囲み出す。


私も遅れて駆け寄る。


“ガラガラッ”


後部座席のドアが開いたかと思うと、数人の男性の後に一人の女性が出て来て群がる彼女達に叫んだ。


「どいてどいて~!ハイハイ、押さないで!」


揉みくちゃにされながら眺めていると車から帽子を目深に被りサングラスをかけた人物が降りて来た。


仁だ……


“キャーッ!キャーッ!”


女の子達の黄色い声援が飛び交う中、周りに目をやることもなく仁は事務所に入って行った。


しばらくの間、事務所の周りにいた女の子達も仁が出てこないとわかり出すと、諦めて帰り出した。


どっどうしよう……。


勢いで来ちゃったけど、どうしたらいい?


ズカズカと中へ入って行けそうもないし……


私が事務所の周りをうろうろしていると、中からさっきの女性が出て来た。


今だ!


今行くしかない!


私は意を決してその女性に声をかけた。