すっきりした仁の部屋。


あいつに初めて会った日の事を思い出した。


私がこのマンションへ引っ越して来なければ出会わなかったんだよね。


いつも隣りにいたからいつでも会えると思ってた。


たった一度しか好きって…言えなかったよ。


胸元で光るネックレス。


初めて仁がくれたもの。


指でそっとなぞる……。


この部屋で聞いた仁の唄。


見渡してもあいつはいない。


考えてみると短い間にたくさんのものを私、……仁からもらってたんだね。


私は何をしてあげられた?


空っぽの部屋の窓から外を見た。


仁がいつも見ていた景色。


今は、それさえも愛しい。


やっぱり……会いたいっ。



私、決めたよ。


ちゃんと自分が納得しないと終われない。


部屋に戻り財布にしまった例の名刺を取り出した。


仁の口からちゃんと聞きたい。


私は名刺に書かれた住所へ行ってみる事にした。