わいわいにぎわっていた食堂の空気が一気にしらける。

カツカツカツというヒールの音だけがやたらに広い空間に谺(コダマ)した。

「もう!どうして帰ったなら帰ったと伝えてくださらないの!?わたくし待ってましたのよ!」

「あぁ、申し訳ない。とりあえず腹ごしらえをと思いまして」

なんか、夫婦というには不釣り合いな2人。

しかめっ面のクロが話す敬語はやけにトーンが低く、
クロがアンジェリカ夫人に苦手意識を抱いていることが窺えた。

「わたくしより腹ごしらえのほうが大事だとでもおっしゃるの!?」

「ええ、まあ」

クロも敬語のくせに容赦が無い。

「まぁひどい!わたくしは心配していましたのよ!」