頭上からテノール声がふってきて、はっとする。
さっきの背の高いお兄さんがのぞきこんでいる。
飛行艇はいつの間にか着陸していて、
前の席に座っていたはずのおじさんはすでに降りていて大きく伸びをしていた。
私はおじさんを探したときに視界に入ってきた背景を見なおしてぎょっとした。
空まで伸びた壁で囲まれた村。
「おい、降りれないのか?」
お兄さんが苛立ちを露にした声で皮肉をもらした。
「あ、すいません!」
あわてて飛行艇から降りる。
木でできた靴を履いた左足は鋼板に当たり、コツンといい音をたてた。
でもあわてて降りようとしたために、
飛行艇から抜こうとした右足を飛行艇のふちに引っかけてしまった。