なんでいなくなったのかと思ったら。

ルナ・ファミリアの一員になってしまっていたんだね。

そんなことも知らない理解できない子供の私は、バル兄ちゃんの帰りをいつまでも待ち続けていたんだよ。

また空に連れて行ってと書いた手紙が、何枚も。

早く帰ってきてと願う気持ちが、何センチもたまっていって…。

いつしか自分で忘れたくて、大事な大事な記憶を手放したのかもしれない。

でも、捨ててしまったわけではなかった。

最下層にしまわれ、眠っていた記憶。

それが呼び起こされた今、もう私は泣くしかなかった。

声をこらえてただ…。

「クロッ!」

突然、セルが叫ぶ。

「クロが目を開けた!」