「空に連れて来ておいて途中で見捨てた奴に、1ミリビットだって恩を感じる必要はない」

ヘーゼルの色をしたクロの瞳は、グレーに見えた。

「時間が、セルの記憶の中の俺を徐々に滲ませ、霞ませ、最終的には攫っていってほしいと願うばかりだった。

なのに、今日会ったら…駄目じゃん。

嫌でも俺がセルの記憶に上書きされるだろ。

だから、会いたくなかったんだ」

夢みたい…

クロがこんな近くにいるなんて。

「でも、私は会いたかったよ?」

「俺は会いたくなかったの!

会いたくなかったって言って嫌われでもすればいいかとも思ったけど…。

お前…傷ついた顔したから…」

「嫌いません」