彼がやっと動き、その手が私の両肩を支え、私を離す。

私がくっついて離れないので、彼は無言で静かに腕に力を入れて私を自分から引き剥がした。

そしてとびきりの優しい笑顔を私に向ける。

「感情がこみあげているところ悪いけど、人違いじゃないかな?」

とてつもなく優しい笑顔で
とてつもなく優しい声で。

絶望とも呼べる言葉を口にした。

「え…?クロ?」

「はじめまして。ルナ大佐、ラクテウス・オルビスと申します。この度は部下が大変お世話になりました」

目の前の彼はにっこりと見た目の年齢にそぐわないほど大人っぽく微笑んだ。

あのクロのあどけない微笑みとはまるで違った。