魅力を失ってしまったカフェオレを前にした私は、ぼんやりとその濁りを眺めた。
私を引き付ける力を持たずして、なぜ私の目の前に居座るのか。
キィッ――
お店の入口が開く音がしたので私は顔を上げた。
入口に目をやると、背は高くないがそこそこ体格のいぃ中年男性が居た。
「いらっしゃい。五十嵐さん。」
「やぁ、マスター。」
どうやらここの常連らしい。
私の貸し切り状態はそこで断ち切られたが、嫌な気分ではなかった。
それはきっと、この五十嵐さんという男性を包む空気がとても柔らかいからだろう。
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