「ゆーう。」



翌日、時刻はもうすぐ22時を迎えようとしていた。

店内にいたお客さんは、さっき出て行った人がラストだったようで。



まだまだこの店は、洒落た雰囲気を宿しながら営業中。


テーブルを拭いていた私の名を、間を延ばしながら呼ぶ声は3日連続に聞く男のもの。



視線を声がしたドアへと向ければ。そこにはやはりグレーの帽子を深めに被り、口元まで今日は濃い赤のマフラーで埋める姿が。





ひらひらと、お決まりに指先を揺らすだけの挨拶をした男はどこか危なげな足取りで私へと近寄ってくる。


カウンター越し、マフラーを外した男は口角を引き上げた。




「暇人。」

「はは、そうでもないんだよー?」

「どこが。」

「仕事合間に、1日1回は優に会いたくて。」

「……、」



殺し文句のつもりかもしれないけど、私にとって今のは結構きつい。