「渚、間違えるなよ」


「え……?」


「お前は、何も出来ない訳じゃない」


「うん……」


「お前はただ、お前に出来る事を見失ってただけなんだ。だから……」


お兄ちゃんは、あたしの瞳を真っ直ぐ見つめたまま続けた。


「出来る事と出来ない事を、ちゃんと見分けろ。出来ない事に惑わされて、出来る事まで見失うな」


力強い言葉に大きく頷くと、お兄ちゃんが息を小さく吐いた。


「それからな……」


真剣だった顔が困ったように笑ったかと思うと、その手があたしの頭を掴んで乱暴に撫でた。