「確か、一週間前だったかな。あいつ、電話で『別れられないのは俺の方だったよ』って言ってたぞ」


お兄ちゃんは、その時の事を思い出すように天井に視線を遣った。


「『俺の病気のせいで渚が泣くくらいなら、一生恨まれるような嘘をついてでも別れた方がいいと思ってたのに、いざ渚に本気でぶつかって来られたら結局は手放せなかった』とか何とか言ってたっけな」


雪ちゃんがそんな風に思っていた事に驚いたけど、それ以上に彼の言葉を嬉しいと感じてしまった。


それでも戸惑いのせいで目を見開いたままでいると、お兄ちゃんが困惑の笑みを浮かべた。