「ただいま」


テレビをぼんやりと観ていると、お兄ちゃんがリビングに入って来た。


「……って、渚だけか。そういえば、母さんは町内会の寄り合いに行くって言ってたな」


独り言のように呟いたお兄ちゃんに気付かれないように、瞳に溜まった涙をサッと拭う。


だけど──。


「また泣いてるのか……」


その姿をしっかりと見られてしまって、お兄ちゃんが眉を小さく寄せた。


「……ったく。今日はどうした?」


困ったように微笑んだお兄ちゃんは、テレビの前で座り込んでいるあたしの隣に腰を下ろした。