「夏生(ナツキ)!早く起きないと遅刻するわよ!」

「んー…あと、5分」

朝、いつものように母が起こしに来る。
だから俺もいつものように布団を被り直した。

「もう、ほんとに遅刻するわよ?」

「…いま、なんじ…?」

「8時13分。」

「ふーん……



ん?…ええっ!!!?嘘でしょ!?」


なんとなしに尋ねたつもりだったが、自分でも驚く程の寝坊に慌てて飛び起き、急いでデジタル時計を確認すると、確かに言われた通りの時間だった。

これは本当に遅刻かもしれないと思い、急いで支度する。

「朝ご飯は食べてく?」

「そんなの食べてる時間ないから!」

「じゃあもっと早く起きればよかったじゃない」


母のごもっともな意見はこの際スルーして、スクールバッグに必要なものを突っ込み、乱暴に制服に袖を通す。
最後に錠剤の詰め込まれたピルケースをポケットに収めて部屋を出た。
そのまま玄関まで走り、急いで靴を履く。
そこにコップ一杯の水と数種類の錠剤を持った母がひょっこりと顔を出した。

「夏生、せめて今朝の分の薬は飲んだら?」

「だから時間ないんだって」

「でも何かあったら…」

「今日だけだからさ!大丈夫だって」

行ってきます、と言って心配そうにする母に背を向けた。