俺にとって彼女は決して触れてはいけない存在だった。
汚れてしまった俺が彼女に触れれば……きっと彼女すらも汚してしまう。
……そんな気がしていた。
でも、今確かにこの腕の中に居る、愛しい彼女の存在に、俺の胸は張り裂けそうになる。
……ノラが俺のモノになったのなら。
……俺だけのモノになったのなら。
そんな愚かな願いが、繰り返し頭の中を過った。
……そんな事にはならない。
それは分かっていた筈なのに、今の俺はただ縋る様に彼女の存在を、そして……彼女の《優しさ》を試していた。
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