彼女の手を強く握り締めたまま家まで戻って来ると、ずぶ濡れの彼女をそっと椅子に座らせた。
ビショビショの只ならぬ俺達の姿に、部屋に居た二匹が少し遠くから窺う様に俺達を見つめている。
「すぐに風呂入れるから、ちょっと待ってろよ」
そう言ってエアコンの暖房を入れバスルームへ向かおうとすると、ノラは俺の手を掴み……それから小さく首を横に振った。
「……ノラ」
彼女の名前を呼ぶと彼女の手をそっと放し、バスルームからバスタオルを持ってくると、それで彼女の髪をそっと拭いた。
ノラは何の反応も見せないまま、俺にゴシゴシと体を拭かれている。
その姿はノラが初めてこの部屋へと来たあの夜と全く同じで、その悲しい彼女の姿に胸が壊れそうな程軋んだ。
それから彼女が話し出す事は無く、俺も彼女に掛ける言葉が見つからないまま……ただ時間だけが過ぎて行く。