「……明、少しいいか?」
そう彼が声を掛けると、少年は静かにこちらを振り向き……そして大きく目を見開く。
「……ど、どうして蓮が……ココに?」
明はそう声を震わせて茫然と僕を見つめる。
その明の問いに彼は真剣な顔をしたまま、微かに息を吸い、それから小さく口を開く。
「明……お前に紹介しよう。この子は《七瀬 蓮》……お前の……《兄》だ」
彼……いや、《父》はそう言って真っ直ぐに明を見つめた。
その父の言葉に明は更に大きく目を見開き、それからゆっくりと僕に視線を移す。
この時の明の顔を……多分僕は一生忘れる事はないだろう。
驚愕で見開かれた彼の瞳はユラユラと不規則に揺れ、そして静かに……深い闇を纏うのが分かった。