……意外な事に明には友達がいなかったらしい。
一緒に遊べるようにと同じ年ぐらいの子供達が家に集められるらしいが、一緒に遊んでも全く面白くなかったそうだ。
……明は普通の子供よりも、大人びている様に感じた。
背もワリと高く、三歳も下だと言うのに、そんなに僕と背が変わらない。
……きっと将来は背が高くなると思う。
でも明が大人びて見える理由は……きっとそのせいじゃない。
それはきっと彼の置かれた環境が、早く大人にならなくてはならない……薄暗い環境だからだと思う。
時折見せる明の表情は、思わずグッと息を呑む程に……切なかった。
十歳の少年が見せるとは思えないその顔に、僕はいつも胸が締め付けられる様に苦しくなる。
……彼もまた……苦しんでいる。
必死に自分の心を隠し続け、うわべだけの笑顔が張り付いてしまう。
……そう……明は僕に似ている。
そんな彼と一緒に居れば居る程、僕の心の中には黒く淀んだ禍々しい感情が沸き上がった。
……明と僕。
一体どちらの方が……より《不幸》なのだろうか。
そんな事を考えながらクスリと自嘲気味に笑うと、残酷な現実に引き戻された。
窓際の《少年》は物憂げにまん丸の月を見上げたまま動かない。