「……ちょ、ちょっと?」

「心配すんなって!!これ、俺んチの車だから」

少年はそう言って困惑する僕の腕を引くと、ほぼ無理やり車に押し込んだ。

そして後部座席の僕の隣に少年は乗り込むと、バタンと扉が閉められ……それからゆっくりと車が動き出す。

「君の家って……お金持ちなんだね」

「そっか?そうでもないぜ?」

僕の呟きに少年はそう言って首を傾げて見せる。

「で、この車は何処に向かってるの?」

「俺の家」

僕の問いに少年は短く答えると、お得意の不敵な笑みを浮かべて見せた。

それから暫く車は走り、そして閑静な住宅街へと進んで行く。

この地域は高級住宅地で有名な場所だ。

名立たる金持ち達がバンバンと豪邸を建てている……庶民には気まずい町。

それにここには……

そんな事を考えている最中も、車は進み続ける。

そして見えた光景に……思わず息を呑んだ。

白い壁に囲まれた大きな洋館。

塀の先には美しい中庭と噴水が見え、花壇には色取り取りの花が咲き誇っている。

その幻想的な敷地へと、車は真っ直ぐに向かっているのが分かった。