「おい!そこの中学生!!」

学校の校門を出ると同時に声が掛る。

どこかで聞いた事のあるその声の主を探す様に辺りをキョロキョロと見回すと、そこには……この前の少年の姿があった。

「俺の事覚えてる?この前コーラ買ってもらった……」

「覚えてるよ」

彼の言葉を遮ってそう答え笑って見せると、彼は嬉しそうにニッコリと笑みを浮かべる。

「この前借りたままの金、返しに来た」

そう言って少年は握り締めたままの少し汗ばんだ小銭を僕に差し出す。

「意外に律儀なんだね。返してもらえるとは思わなかった」

「俺は借りは作らない主義だ。って事で、今日はアンタにお礼をしたいんだけど……今日、空いてる?」

少年はそう言ってニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

「予定は空いてるけど……別にお礼とか気にしなくても……」

「いいんだよ!!俺がしたいって言ってんだから!!ほら!着いて来いって!!」

そう言って少年は僕の腕を掴むと、グイグイと手を引いて歩いて行く。

彼に引き摺られる様にその後をついて行くと、道路に停められている黒い高級車が目に留まった。

車の外に立っていた男は少年の姿を見ると、小さく頭を下げそっと車の扉を開く。