「これ、一万円札は使えないみたいだよ?千円札か小銭じゃないと……」

「……ええぇえ!?それしか持ってきてないんだけど!!」

僕の説明に少年は驚いた様に声を上げると、ガックリと肩を落として深いため息を吐いた。

そのあまりの気落ちさにクスリと笑うと、そっと財布から小銭を取り出し自動販売機に入れる。

「ほら、コーラのボタン押してみなよ」

そう言って少年に笑い掛けると、少年は暫く僕の顔をジッと見つめ、それから恐る恐るコーラのボタンに指を伸ばした。

ピっという短い電子音の後に、ガコンとコーラの缶が落ちてくる。

それを手にとって少年に差し出すと、少年は《おお!》と瞳をキラキラと輝かせてコーラの缶を受け取った。

「サンキュ!!助かった!!お礼にその一万円やるよ!!」

「い、いいよ。また今度会えたら返してよ」

そう言って彼の手にそっと一万円札を返すと、少年は不思議そうに首を傾げて僕を見つめた。

「ふ~ん……分かった!!じゃ、またな!!」

彼はニヤリと笑って小さく手を上げると、コーラの缶を開けグビグビとそれを飲み始める。

そんな彼に小さく手を上げると、そのまま家へと向かって歩き出した。

「うっめぇ~!!」

後ろから彼の嬉しそうな声が聞こえ、それに振り向く事はしないまま……微かに笑みを浮かべ家へと向かって歩き続けた。

それから……何日か経った時だった。