「……いるよ」

そのノラの答えに、思わず手にした包丁をシンクに落としそうになる。

「……え?」

思いもしなかった答えに小さく声を漏らすと、固まったまま彼女の背中を見つめる。

しかしノラはゴソゴソと冷蔵庫の中を漁ったまま、何も答えない。

「ねぇ、今日はカレーでいいか……」

「……誰?」

野菜室からニンジンを取り出し振り返った彼女の言葉を遮り、そう問い掛ける。