病室に戻った私は、夫が近くのカフェで買ってきてくれたサンドイッチをつまんだ。

キムチ鍋で誕生日パーティーの予定が、病院のベッドでのサンドイッチに変わった。

ロマンチックには程遠いが、最高にドラマチックだと思った。

明日の早朝からモニターを装着し、陣痛促進剤を開始しますとの説明を受けて夫は家に帰って行った。

ひとりになった私に助産師さんが「今日、お誕生日だったんですね」と声を掛けてくれた。

私は「破水しちゃって、とんだ誕生日プレゼントです」と少しオヤジくさいことを言ってみたりした。

明日出産か・・。

とりあえず、明日に備えて今夜は眠ろう。

そう思って目を閉じてみるものの、やはりなかなか眠れない。

チューブが入っている背中も気になる。

チューブと言っても極細でもちろん痛みや感覚こそ無いが、背中に何かが入っているというだけでどうしても気になる。

そして夜の11時を過ぎた頃、お腹が張る度に「ドーン」という重い痛みを感じるようになった。

我慢できない程では無いが、これまでにこんな痛みは感じたことがない。

お腹から下半身全体にかけてズシンと重くのしかかるような鈍痛。

タイミングよく助産師さんが見回りに来たので痛みを訴えると、すぐにモニターを装着して麻酔を開始することになった。

ということはこれは陣痛の始まり?

おー。

痛みが怖くて無痛分娩を選んだ癖に、初めての陣痛を経験してちょっぴり感動してしまった。

助産師さんたちが手際よく準備を開始し、モニターが装着され麻酔を入れ始めた。

左腕には点滴が打たれ、右腕には血圧計が巻かれ全身管だらけである。

時刻は午前0時。

日付は10月10日に変わった。