そんなある日、いつものように出社して、パソコンに向かっていた昼頃。

下腹部に「ペコッ」とした感触を覚えた。

初めは特に気にせず仕事を続けたのだが、その後も時間を置いて再び「ペコッ」を感じ、今日はまた変な感じだなぁと首を傾げた。

と言うのは妊娠してからお腹がキリキリするような感覚(子宮が大きくなる時に感じるらしい)とか、便秘でゴロゴロ痛かったり様々な感覚を覚えていたのだが、この「ペコッ」は今までには無い感覚だったのだ。

・・あれ?

ひょっとして、もしや?

これが胎動じゃ・・?

気がついた私は興奮気味に次の「ペコッ」を待ったのだが、なかなか訪れない。

勘違いかしら。

その日の夜、ベッドに横になって眠ろうとしていた時にまた例の「ペコッ」がやってきた。

キタ!

これ、きっと胎動だ。

私は隣で寝ている夫を起こした。

「今、もしかしたら胎動感じたかも!」

夫は寝ぼけ眼でそうかそうか、とごにゃごにゃ言ってまた眠りについた。

ドラマでよくあるような、旦那さんが奥さんのお腹に耳や手を当てて「パパですよ~」的な甘々シーンは私たち夫婦には無かった。

胎動より睡眠を取った夫に少し不満を覚えた。

だが私自身ももう少し初胎動の感動に浸りたい気持ちはあったものの眠気には勝てずにそのまま眠った。

翌日から1日に数回ではあるが小さな胎動を感じることができ、それは日を追うごとにはっきりと、そして回数も少しずつではあるが増えていった。

感じ方も「ペコッ」から「ポコッ」に、そして「トンッ」と、今足で蹴ったかもとわかるくらいになっていき、段々と「お腹の中に人間がいる」実感が湧いてきた。

妊婦にとって嬉しい胎動だが、後々この胎動に苦しめられることなにるとはこの時は想像もしていなかったのだ。