愛美はシルバージュエリーの店にお誂え向きの人材だと、私は思う。
しかも、売り上げはいつも断トツで一番。
愛美は1年前、中途採用でこの売り場にやってきた。
初めて会った時は、絶対に相性が悪いだろうと思っていたはずなのに、いつの間にか私と愛美はこの売り場で誰よりも親しい仲になっていた。


「楽しみにしてる」


愛美の選ぶお菓子は最高にセンスがいい。
銀座のどこそこ、自由が丘のどこそこ、有名パティスリーは大体抑えていて、和菓子にだって精通している。
見た目と同じくらい、はたまた、それ以上に中身が重厚な愛美のことを、私は敬愛していた。
愛美に憧れる私は、いつかショートヘアにしたいなと常々思うのだけれど、悲しいかな、うなじに入った蝶のタトゥーのせいで髪を切ることができない。
親でさえ、この蝶の存在を知らないのだから。