匠は、私が上の空だったことには気付いていない。















バスタブはぴかぴかに洗ってあって、そこには熱めのお湯が張ってあった。
匠は男の人にしては出来すぎるくらいに綺麗好きだ。潔癖に近いくらいに、何もかもが整然としていないと落ち着かないらしい。
もっとも、それゆえに完璧でない自分が赦せない訳だけれど。
二人でいる時は、時間が合えば一緒にお風呂に入る。それが私達の暗黙の決まり。


「美味しいご飯にお風呂なんて、最高だわー」

「どういたしまして」


匠は嬉しそうに言った。
今日の匠はすこぶる機嫌がいい。
自惚れとは自覚するが、他ならぬ私と一緒に過ごしているから。
狭いバスタブに2人が同時に入ることができるのは、専ら匠が細くて小柄だからだ。
匠と私は向き合う形で、バスタブに身を沈める。