『匠さんは凄いですよ』
ぽつりと、ナオが呟いた。
『サボってばっかりなのに?普通の社会人なら、即刻解雇だと思うけど』
匠の休み癖は、店の人達にとってはさぞや迷惑だろう。
“病気だから仕方がない”と言ってしまえばそれまでで、でも、匠の仕事は私の仕事よりある意味においてもっと厳しいに違いない。
そんな理由が通用するとも思えない。
なのに、ナオは何の脈絡もなくそんなことを言った。
『だけど、店の方から三行半を突き付けられない。それだけの実績を上げているからです。どんなに毎日頑張っている奴でも、客が付かなきゃすぐに棄てられる』
匠が売れっ子なのは知っていた。
でも、そこまで考えたことはなかった。
あるいは…考えたくなかったのか。
匠も匠で、ある種のプロフェッショナルなんだ。