『最初はただの馬鹿な子としか思ってなかったのに…なんでだろうなあ』
煙草を持つ手とは反対の手で、ナオががしがしと頭を掻く。
『あいつが病んでるの見るの、辛くなってきちゃったんですよね。日を追うごとに』
優しそうに、寂しそうにナオは笑った。
『ナオは、お店辞めたくなんないの?』
『…分かんないです。結構稼げるし、まあぶっちゃけ俺に向いてるとは思うし、それに…うちの店はオーナーが厳しくて簡単に辞めさせてくれない。だけど俺、最近マジで客と寝てないんですよ。ほんと、デートだけ』
『彼女の為に?』
『あいつが泣くから。でも、やっぱりあいつは信じてはくれないみたい』
ナオはぷうっとフィルターを吸い、そのまま大きく煙を吐き出した。
はたまた、それは溜息だったのか。
それがいやに煙たくて、私は思わず顔をしかめてしまった。