「ナオ、辞めちゃった」


カチ、とコンロの火を止めた音と同時に、匠は言った。


「…問題、起こしたから?」

「うん。オーナーも止めなかったらしいし」


もしかしたらそうなるだろうなと予測は出来ていたから、驚くことはない。
全てのジュエリーを外し終わり、テーブルに散らかしたジュエリーをかき集めて、テレビの横にある安物のジュエリーボックスに一緒くたに入れた。
ネックレスが絡まろうがピアスのキャッチがばらばらになろうが、匠のジュエリーとごちゃまぜになろうが、お構いなし。


「で、理由って何だったのよ?」


匠はキッチンで盛り付け作業に取り掛かっていた。
目線は私に合わせない。


「ナオ、電話にも出ないしメールも返ってこなくてさあ。それでオーナーに聞いた話だと、なんでも他のスタッフの客を取ったんだって」