想像できないのは、私がまだ寝ぼけているからではない…はず。


「あいつ、セーラムで一番温和で、しかも頭がいいからなあ。有り得ない話なんだけど。…ま、理由はまた聞いてみるよ」


くはあ、と私の耳元で匠が欠伸をひとつ。
普段は滅多に感じないアルコールの匂いが、薄く薫った。
努めて覚醒を保つけれど、それでも明け方は寝入りよりも眠たい。


「最終的に警察が来て、まともにナオと話せなかったから…さ」


匠が甘えるように私の首筋に鼻やら唇やらを押し付けてきて、その感覚にふわりふわりと酔っていたのも束の間、いつの間にか私の意識は途絶えていた。















今日は匠が休みだ。
無断欠勤や当日欠勤ではなく、元々決まっていた休み。
玄関を開けると、醤油を焦がしたような香ばしい香りが充満している。