さすがにこれはプレゼントできない。貢ぐことになっちゃう。


「そっか。じゃ、また今度ね」


愛美は微笑むと、くるりと私に背を向けてパソコンの画面を見始めた。
折れそうなくらいに細い背中。
そこに一輪の大きな薔薇が咲いていることを、愛美の彼氏は知らない。















仕事を終えて、私は自分の家ではない、匠の家へと足を向ける。
帰りがけ、愛美は「京都から帰ってきて、彼氏と一緒に食べなさい」と焼き菓子を大量に持たせてくれた。
私の知らないパティスリーの名前が入った紙袋に、ブランデーケーキやフィナンシェ、クッキーがひしめき合っている。
聞けば、休憩時間を使ってタクシーで目白まで行って買ったのだとか。


「お気に入りのパティスリーが目白にあるのよ」

「だからって、わざわざ目白!?」