「本当は帰りにご飯でも…と思ったんだけどさ、あやめ、彼氏が待ってるでしょ?」

「ううん、匠は今日から京都。帰ってくるのは明後日なの」

「…そう」


同情するでもなく、愛美はそう相槌を打った。
愛美はいつだってクールだから。
「京都」、それだけ言えば、鋭い愛美はそれが仕事であることに気付く。
匠のことは、愛美には全て話してある。
高校の時に大好きだった先輩であること、寂しさを紛らわす為に呼んだ出張ホストの男の子が匠だったこと、それからすぐに付き合ったこと…匠のメンタルが脆弱で、すぐに死にたがること。
全て、話してある。
愛美は偏見を持つことなく(受け入れているわけでもないだろうが)、話を聞いてくれる。
私と同い年なのに、私より社会人経験が深いからか、私が今現在最も信頼しているのが彼女。