相馬常務は馴れ馴れしく肩を組み、俺の耳元でくぐもった声で問いかける。


「お前の嫁さん…麻古さんの妹だろ?今…一緒に仕事してること知ってるのか?」


「俺と麻古は何もないって…。変な勘ぐりは止めてくれ」


「でも、麻古さんはそうでもなさそうじゃん。秘書なのに、ドレスなんか着て…女を猛アピールしてるぞ」


「それは俺が着せたと言うか…」
深い意味はなかった。唯、パーティに地味なカッコは勿体無いと思って。


「はぁ?トーマの方かよ…ドレスなんか着せて…今夜…スイートでお泊りか?」
相馬常務の誇大妄想は俺にあらぬ言葉を投げかける。


「・・・俺と麻古は…」



「社長」


背中越しに聞こえる麻古の声。



俺は相馬常務の手を払い、拘束を逃れる。


「相馬常務…ではまた・・・」
俺と麻古と一緒に、人混みの中に紛れた。