一際、俺の目を惹いたのは麻古の口許。


「それは…ウチのマーメイドの夏向けの新色ルージュ」


「さすがは社長様…自社の商品には敏感ね」


「当然だろ?」


俺のいちばん、気に入っていた新色の色。


ピンクバイオレット。


ピンクのかかった紫色の口紅で、パールの輝きも放つ。
唇に立体感を持たせ、濡れたようなオトナの唇を演出。


CMのような説明ばかりになったけど、俺の一押しの夏の色。


「それいちばん、俺のお気に入りだ…」


「私も…」


「お前もか?」


公共の場所で、俺たちは口紅の話で盛り上がる。


俺と美古は趣味が合っても、センスは合わない。なのに、元カノの麻古とは凄くセンスが合った。