「・・・止めて…トーマ」



私は立ち上がって、トーマの声で制した。



「美古…」



「・・・私…自分でも社長夫人としての自覚が欠けていると思ってる…栗原さんの言うとおり…暫く、事務所と相談して、モデルの仕事は休む」



「…」


トーマは栗原さんの上着から手を離した。



「お前の夢じゃなかったのか?」



「でも、モデル・美古である前に私は…『星凛堂』の濱部透真社長の夫人・濱部美古だよ」



「・・・」



「ご馳走様です…俺は車の用意があるので、お先に行きます。社長」



「そうしてくれ…栗原」

栗原さんは私たちを置いて、先に出てしまった。