その日の夜、

父は高熱を出した。

主治医に呼び出され、

嚥下性肺炎を起こしている

と告げられた。

アルツハイマーの人には

良く見られるのだという。

もう長くはないだろう

とのことだった。

その日の夜、

母は一睡もせず

父の手を握り看病した。

次の日の朝、

父の呼吸はおかしかった。

あっという間に父は

息を引き取った。

有喜を

朝一の新幹線で来るように呼んだが、

父の死に目には間に合わなかった。
 
「お父さん…

 何で死んじゃったの?」

有喜は母に聞いた。
 
「お父さん、

 食べ物を肺に入れちゃって

 息が出来なくなったのよ…。

 苦しかったろうにね…。」

母は話しながら

涙を流した。