「失礼します。」

勢いよく病室のドアを開けて来たのは

有喜の母だった。

連絡を受け、

急いで飛んできたのだろう。

髪は乱れ、

息も途切れている。

母は純一の前に立ち、

思いっ切り頬を打った。
 
「あなた何考えてるの!」
 
「お母さん!

 何するの?」

有喜はビックリし

大声を出した。
 
「あなただから

 有喜を任しても大丈夫だと信じて、

 渡したのよ。

 それを…

 それを、こんな仕打ちで返してくれるなんて…。」

そう言いながら、

母は号泣しその場に泣き崩れた。
 
「お母さん…。」

有喜は母を抱きしめた。

「私は大丈夫だから。

 怪我だって大したこと無いんだし…。

 いくら何でも、

 突然純一を打ったら

 可哀想よ。

 純一だって私の事心配して

 付き添っててくれたんだから。


 あんまり純一を

 攻めないでいてあげて…。」
 
「お母さん…。

 ほんとすみませんでした…。」

純一は泣きながら謝った。

この時、純一は

自分の一生を掛けて

誠心誠意、有喜に尽くしていこうと

決めた。