「遅くなってごめん!」

純一は

旅館のドアを軽快に開けた。

部屋は物静かだった。

布団に横になっている

有喜の姿が目に入った。

ふてくされて寝てるんだな…。

純一はそう思った。
 
「有喜ごめんな。

 お詫びにケーキ

 買ってきたよ。

 有喜ケーキ好きだろ。」

そう言い、

有喜の顔元の方に足を運んだ。

その瞬間、

純一は持っていたケーキを落とした。

純一の目には

真っ赤に染まった布団が入ってきた。
 
「有喜!

 どうしたんだよ。

 有喜!」

返事がない…。

純一は

血で赤く染まった有喜を抱えながら

大声で助けを求めた。
 
「誰か!誰か!

 救急車!

 助けてください!」

純一は有喜を抱えたまま

廊下に泣き崩れた。
 
「有喜~。」