次の日から、

有喜は

母親や純一が面会に来ても、

寄せ付けなくなっていった。

「もう、

 同情はまっぴらよ!

 2人して私に

 嘘ついて、

 影で笑ってるんでしょ!

 私がどんな姿になるか

 見物なんでしょう!

 もう、2人共出てって!

 2度と来ないで!」

ヒステリーを起こした有喜は、

2人の言葉なんて

聞き入れる余地もない。

泣きじゃくりながら、

テーブルに置いてあった、花を

2人に向けて投げつける。 
 
「有喜!

 いったい何があったんだ!」

純一は急に

ヒステリックを起こした有喜の

心情が解らなかった。

「私知ってるんだから!

 私の病気は

 お父さんと同じだって!

 見たのよ。

 カルテに

 アルツハイマーって、

 そう書いてあったの!

 もういいわ。

 私の事はほっといて!」

2人は怒り狂った有喜を

どうする事も出来なかった。
 
純一は

「有喜!

 俺は本気でおまえを助けたい!

 そう思ったからここに来たんだ。

 同情なんかじゃない!」

必死で自分の気持ちを伝えるも、

何を言っても

有喜には全く入っていかない。
 
「出てって!出てって!」

叫び声にびっくりし、

病棟の看護師が駆けつける。
 
「患者さんを

 刺激しないで下さい!

 とても、

 ナイーブになってるんですよ!

 今日はもうお帰り下さい。

 また日を改めて。」

そう言い、

看護師は2人を

部屋から追い出し、

有喜を一人にする。
 
「急に

 病気の事を知ってしまった


 有喜さんの事を考えて

 あげて下さい。

 2人も、

 すぐに病気を

 飲み込む事は出来なかったでしょう?

 有喜さんは本人なんです。

 余計に

 病気を飲み込む事は出来ないと思います。