「下行ってみる?」



その声に、あたしは、立ち上がり、



地面に置いたままだった、バージニアと携帯を、ぎゅうぎゅう詰めに、お尻のポッケに押し込んだ。



さっきのあたしの吸い殻と、その横に投げ捨てられた、

ソレよりちょい太い吸い口の、茶色い善のフィルターも、忘れずに、ちゃんと拾って…。



善は、それを持ち帰る、あたしの姿を見て、意外そうに首を傾けた。



こんな風に外の風景で煙草を口にする時は、、持ちかえるのが、理央ルールだという事を話ながら、砂浜へ向かった。


自分の好きな場所を汚したくないから…ただ、それだけのこと。



善は、そのあたしのルールに、感心して頷いた。





波で足元が濡れない辺りで立ち止まり、また、遠くを眺めていた。



今度は、波添いを、横に歩く。



善は、魔法にかかったみたいに、さっきとは違う、優しい表情をしている。



後を行くあたしに合わせて、何度も立ち止まり、気遣う。



さっきまで、ここにいた、5、6人のグループの打ち上げ花火の音が止むと、



波の音だけが残され、急に淋しい気持ちにさせられた。