湿った砂に足を取られ、思うほど、


早く走れない。



ヤバい、急がなきゃ!


絶対に先に着きたい。


何でもムキになっちゃう

あたしのスイッチが、


本気に切り替わる。


善との距離を少しとって、
背後から、足音が聞こえない事を確認して、

一旦、

ズレた ヒールを履き直した。



その、一瞬の隙をみて、その横を、


素早く

白のスニーカーが、


追い抜いていった。



堤防に上がる、階段に


2.3歩足を踏み入れた善は、



あたしとの差を確かなモノにすると、

余裕をみせて、
スピードを緩め、


首を後ろに回し、


「にぃっ」ってしてきた。


先に辿り着いた善が、

両手をあげて、

ガッツポーズまで、してみせた。




悔しいっ。

追い掛けるあたしは、

コンクリートの階段の一歩目で

負けが決定になってしまったけれど、



足を止めることなく、そのまま一気に駆け上がり


助走をつけたまま、


1位の背中を両手で思い切り押してやった。



頭、首、上半身が、ゆるく前にバランスを崩しながらも、

足は踏張ったまま、

一歩も譲らずに、

善は笑った。

           

「先に、独り占めしたかっよぉ〜、

ハァ〜ハァっ〜

…この景色…」



「ごめん、ごめん、オレ、足長いもんでぇ…」


息を切らすあたしに、


善は、余裕しゃくしゃくに笑いで返す。



「ハァ〜?!…プっフフぅ、。」