「さよなら。」龍も笑った。


涙は絶対に見せないってそう誓った。
じゃないと 龍を苦しめることになる。


昨日 二人であんなに泣いたんだもん。
旅立ちの日は 笑顔で・・・・。
龍のつめたい手を静かにほどいて 私は歩き出した。

「絶対にふり向くなよ。ここでさよならだ。」

私は背中を向けた途端 涙が溢れてきたから

「わかってるよ。」そう言って歩きだした。


龍の足音も聞こえた。

この道から 二人別々の道を歩きだす。

激しい嗚咽 龍に聞こえないようにと早歩きをした。


角を曲がる瞬間少しだけ…少しだけ去って行く龍の姿を
最後に焼き付けようと ふり向いた時


龍がさっきと同じような位置に しゃがみこんでいた。


胸が一杯になって…押し寄せる波にのまれるように
また私は龍に向かって走り出していた。



龍の体が大きく揺れているのはわかっていたから
最後にもう一度だけ抱きしめてあげたい


「龍~~~!!!」
驚いて立ち上がった龍の胸に飛び込んで
夢中でキスをした。
しょっぱいキス・・・そして顔を離して
涙で濡れた龍の顔を見た。
このまま離れたくなかったけど

私はまた今来た道を走りだした。


もうふり向かない・・・・・。
そのまま私は一度もふり向かずに家に向かって走った。

子供のように泣きながら。


龍・・・龍・・・大好きだよ……。