「私ね、あいこって名前だけど、本名とそんなに変わらないんだよ。」

『そうなの?』

「うん。みやぞのあいか、っていうんだ。
お宮の「宮」に、保育園の「園」で宮園、
藍色の「藍」に、華やかの「華」で、藍華。
宮園藍華。」

『へえ!』

「…だから、あいって呼ばれると本名呼んでもらってるみたいで嬉しいなっ」

『あ…う、うう…なんだよそれ…』

「あははっ」

『もう…』


なんて、ちょっとからかってみる。
相変わらず可愛い反応だ。


「りゅうくんは?」

『僕?』

「名前聞いてもいい?」

『あ…、うーん……』

「あ、もちろん嫌ならいいよ?」

『……。』





やっぱりダメか。






しかし暫く沈黙があった後、チャットの着信音。







そこには、“佐藤圭佑”と書かれていた。







「……あれ?」

『さ…さとう…けいすけ。…平凡な名前でしょ?』


そう言った後に、恥ずかしそうに笑った。


これは、予想外。

彼は誤魔化しが上手で、いつもなにか誤魔化されることが多かった。



だから今回も教えてもらえないと思っていたのに。





ただ、嬉しくて。



「…ううん、すごくいい名前だね」


からかうことを忘れて答えていた。





さとう、けいすけ。


佐藤、圭佑。



うん、いい名前。