僕は死ぬ時は楽に死にたい。
人がいつかは死ぬのならこの機会を利用したい。
一ヶ月後に苦しみを伴わずに死ねる。
むしろこれは考え方によっては好都合だ。
寿命で死ぬのもそれなりの苦しみを伴うはずだ。
異世界の自分との干渉による矛盾。
これを埋める為の作用として強制的に死ぬのであればそれは苦しみを伴わないのが当然だ。
僕は楽に死ぬ道を選ぶべきか。
それとも友人を選ぶべきなのか。
ただ、僕が「もう一人」を殺そうと僕が自然死しようと「もう一人」は死ぬ。
時間が来るまでにどちらかが死なないと双方が死ぬのだ。
殺そうとすればあんな奴は殺せる。
見る限りあいつは冷静になれない奴だ。
それに行動力もない。
行動力のある者が不安を感じたならもっと僕の事を観察する素振りがあるはずだ。
明らかにあいつの動きにはそれが少なかった。
僕はいざという時の為に準備が出来ている。
少なくとも自分が「もう一人」に殺されれば苦しみを伴って命を落とす。
だからこの誰もいない廃墟の建物に来て変装の準備をしに来た。
眉毛の縁を剃ってそこに脱毛剤を縫った。
これで眉毛がだいぶ小さくなる。
次に髪を染めた。
髪には軽くパーマをかけた。
次に付けまつ毛を付ける。
とはいえ、お洒落用の長すぎる物じゃ違和感があって変に目立つ。
付けまつ毛を適度な長さに切ってまぶたに取り付けた。