もの静かで湿気の溜まった廃墟の建物。
僕は今そこの庭にいる。
昔、例の唯一信用出来る奴とよくここへ来て話し合ったものだ。
タイムカプセルもここに埋めた。
元々、ここは僕が一人になるのに使っていた場所だ。
「友達の家に泊まる」
親にそんな嘘をついてここの建物の中で一人で寝た事もある。
深い理由はない。
ただ自分を試したかっただけだ。
一人を貫いて生きれるのかを試し、自分に酔っていた。
とはいえ、この辺には僕の好きな漫画を置いた美容院がある。
さらに図書館もあり、ゲーム屋には体験版のゲームがある。
その上、ゲームの体験版は新しいゲームが出る度にそのゲームの体験版に変わるのだ。
無料で娯楽を味わうのにはそこそこ充分だった。
食べ物までは流石に調達出来なかったが、近くの川の水が綺麗で飲むことが出来た。
ちなみにこの建物は元々は旅館だったそうだ。
中学生だった当時、お札の貼られた部屋に入った事もある。
薄暗くて不気味だったから一分ももたずにその部屋は出た。
今でも怖くて入れはしない。